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国産鶏肉(ひき肉)の約2割から、食中毒を起こすサルモネラ菌が検出された。欧州に比べ、2倍以上の汚染率だった。また、5種類以上の抗生剤が効かない耐性菌が4割を超えていた。市販の鶏肉820検体を調べたもので、全国規模で調べた初の調査になる。サルモネラ菌は加熱すれば死滅するため、専門家は十分な加熱を呼びかけている。 調査は、天使大学大学院(札幌市)の平井克哉教授(家畜微生物学、岐阜大名誉教授)が07~08年、各地の衛生研究所の協力で実施した。生産地が確認できる国産の鶏肉820検体を集め、サルモネラ菌による汚染がないか調べた。この結果、約20%にあたる163検体からサルモネラ菌が検出された。調査では、バラバラで検査しやすく、食肉処理の過程で汚染される可能性がある、ひき肉を使った。 菌は皮に付着していることが多く、もも肉、むね肉から菌が見つかることもあり、鶏肉全般で十分な加熱が必要だという。 英国やイタリア、スペインでも01年以降、同規模の鶏肉(主にひき肉)調査が行われているが、汚染率は4~9%だった。 さらに、各地の衛生研究所の協力で、食中毒患者から採れたサルモネラ菌と、遺伝子の型を比較した。すると、一部の菌は、鶏肉から分離された菌の遺伝子型と酷似しており、鶏肉を食べて、食中毒になっている可能性があることが分かった。 また、鶏肉から見つかったサルモネラ菌の大半が、抗生剤が効かない耐性菌だった。5種類以上の抗生剤が効かない多剤耐性菌も45%あった。8種類の薬剤が効かない菌も見つかった。ごく一部だが、治療の切り札となる新しいキノロン系の抗生剤が効かない菌もあった。 この結果は、今月27日に北海道大で開かれる日本食品微生物学会セミナーで発表する。 平井教授は「考えていたより高い汚染率だった。家庭や飲食店では、鶏肉も十分に加熱して、調理前には冷蔵庫でしっかり保存して欲しい。生産者は、鶏のワクチン接種や鶏舎の衛生管理を徹底して、食品加工の段階でも検査や監視が必要だ」と話している。(林義則)

〈サルモネラ菌〉 鶏、豚などの消化管にすみ、汚染された卵や肉などから、人に感染する。食品での汚染、残留の基準はない。70度で1分以上加熱すると死ぬ。感染すると、8~72時間の潜伏期を経て、激しい腹痛や下痢、高熱などを引き起こす。症状は4~7日ほど続き、まれに死ぬこともある。国内では07年、約3600人が発症し、食中毒原因(発生件数)の3位になっている。

岩手大動物医学食品安全教育研究センター長の品川邦汎教授(食品安全学)の話 鶏肉の実態を全国規模で明らかにした点で意義がある。ただ、鶏肉の生産や食肉処理の段階で、サルモネラ菌を直ちにゼロにするには、膨大なコストが必要で事実上、不可能だ。消費者や販売店は、菌が鶏肉に付着していたとしても、常温で菌を増やしたり、まな板の上で他の食材に広げたりせず、確実に加熱、調理することが大切だ。生産者や食肉加工業者も衛生管理を進めて、より安全な鶏肉を生産する努力が重要だ。